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「すっげぇ人だな」

 俺は約束の時間よりも早く着いてしまっていた。

「う……五時ってなんだよ、五時って……一時間も早ぇ」

 これじゃぁまるで、俺が楽しみにしてたみたいじゃねぇか……つうか、マジで楽しみだったんだけどさ。おかげで昨日は眠れなかったぜ。

 そう思いながら、俺は神社の鳥居に足を運ぶ。

 ハッとした。

 人混みに紛れて、見慣れた姿を見つけたんだ。

「アキ、ラ?」

 俺は一目散に走って、走って、アキラの待ってる鳥居に辿り着いた。

「なんで?!」

「よぉ」

 当たり前のように、アキラが手を挙げ、また俺の頭を撫でる。

「早く着いちまった」

 そう言って笑うアキラに、またドキドキして。

「……俺も」

 それだけ言うのが、やっとだった。

 いろんな夜店を見て回って、いろんな話をして、すげぇ楽しい。いつもテニスしてるアキラの表情しか見た事しかなかったから、なんか、新鮮。

「そろそろ花火、始まる時間じゃね?」

「ん、ああ、そうだな」

 人混みをかき分け、俺たちは何とか川沿いの土手に座る事が出来た。

「なぁ、俺、無理に誘ったけどアキラって家、大丈夫なのか?」

 何を今さら。

「なんか、遅い時間になって怒られねぇ?」

「大丈夫だよ、俺んとこ親父だけだし、仕事でいねぇし」

「……いないって」

「あ、でも黙って来てる訳じゃねぇよ、ちゃんと友達と花火見に行ってくるって言ってあるから」

「……そっか、良かった」

「お前こそ大丈夫なのかよ」

「ん、俺も平気だ」

「そっか」

 言いながら、アキラが何かゴソゴソとポケットを探りだした。そして、俺の目の前に、何かをかざす。