それからほぼ毎日、俺はアキラとコートにいた。

 そう、夏休みの宿題なんかしないままだ。まずいとは思ってたけど、でも、アキラに会うのが楽しくて、そんなの二の次になった。

「な、明日、八幡の神社で夏祭りあんじゃん」

 ふと、練習の合間にアキラが言った。

 夏祭りか、そう言えばそんなのあったな。

「一緒に行かね?」

「え?」

「嫌か?」

 俺は返事をする事無く、首を横に振っていた。

 嫌じゃ……ない。

「やった、じゃ明日どこで待ち合わせする?」

 そう言えば、お互いの家も知らないんだっけ。八幡って言ったら、アキラの家の方が近いから、そっち側で待ち合わせすればいいんだろうけど……。

「俺、お前、迎えに行こうか?」

「は? いいよ別に」

 もうすぐいなくなる家なんだ、今さら来ても、意味ないよ。

「え~じゃぁどこにするよ~」

「そ、そうだな……現地集合でいいんじゃね?」

「現地? ま、それもそっか、よし、決まりだ」

 そう言って、アキラが小指を出した。

「何だよ」

「指切りげんまんだ」

「何でっ」

「約束破らないように」

「俺がいつ約束破ったよ。お前に言われる通り、俺は毎日、お前の相手してやってんだぜ」

「ま、それもそうだけど」

 痺れを切らしたように、アキラは無理やり俺の小指を絡めとった。

「いいじゃん別に、指切りくらい、減るもんじゃなし~」

 そう言って、笑いながら俺の指を振る。

 待て待て待て……小指がじんじんするぞ。熱くて、そこから俺の破裂しそうな心臓の音が伝わりそうなんだよ。

 でも――……俺はその指を離せない。

 繋がっていたい……心のどこかで、そう思ってしまってるんだ。

「じゃ、明日、花火もあるから夕方六時な」

 その日は、そう言って別れた。