「はぁ? 何のために」

 ホントは嬉しいんだ、嬉しいんだけど……なんか素直になれなくて。

「いいから、俺の練習相手」

「ヤダよ、もう、疲れた。絶対に明日、お前のせいで筋肉痛だよ」

「はは、運動不足だからだよ」

「うっ……」

 返す言葉がない。

「じゃ、明日も待ってるから」

 アキラは、そう言って俺の頭をくしゃりと撫でた。

――熱い……。

 アキラに触られた部分が、熱いよ。

 俺の事なんか何も知らないまま、アキラが大きく手を振って、何度も振り返りながら帰っていく。

「……明日、か」

 なんか妙に俺の心が弾んでるんだ。

 なんだ、これ、なんだ?

 でも、その時はこれが「恋」だなんて、気付きもしなかったけど……。