「へぇ、同じ名前かぁ、なんか呼ぶの照れくさいな」
はは、と言ってアキラは、握手を求める手を差し出す。
その時は躊躇いなんかなく握ったけど、でも何だろう……触れた手が熱くて、めちゃくちゃ緊張した。
今まで男の手なんか、嫌ってほど握った。肩だって組んだ。でも、どんなに触れても、こんなにドキドキした事はない。
俺は生まれて初めての体の変化に、戸惑いを覚えた。
「じゃ、やるぞ、乱打」
「お、おう」
って、なんで俺、やる気になってんだ?
ま、いっか。そう思って始めたはいいけど、空振りばっかりで、アキラの相手にもなんねぇ感じだった。
「何で当たんねぇんだよ!」
息切らして、何度振っても、俺は何もできなかった。だんだん自棄になってきた。
「じゃぁさ、こういうのはどう?」
「は?」
向こうのコートから、アキラが叫んだ。
「ムカつく奴の顔思い出して」
言いながら、アキラは俺にボールを打ってきた。
「その球、そいつだと思って打つ!」
ムカつく相手、ムカつく相手……親父っ!
そう思ってラケットを振ったら、当たった。
「ナイス」
アキラが手を叩いて笑ってくれた。そして。
「すっきりした?」
と聞いてくる。
「あ、ああ、まぁ」

