「ねぇねぇ、何センチ?」

 おいおい、木下の奴、まだ聞いてんのか、しつこい奴だな。

「ねぇ」

 晶、無視しとけ。

「ねぇ」

 だぁ、マジしつけぇ。

「百六十九だよ、文句ある?」

 あ、挑発に乗ったよ。

 ん、でも百六十九か、全然問題ないだろ。俺と十五センチ以上は差があるし、って、俺はそんなの関係ねぇんだよ。

「え~七十ないの?」

 もういいだろ、散々聞いて答えまで貰ったのに、これ以上、晶に食い下がるってんなら……って、おい、マジかよ。

 晶、フラフラしてんじゃねぇよ。た、倒れるのか?!

 急に、横に立つ晶が、俺の方に体を預けてきた。

 木下の悲鳴が、耳に痛い。

「おいっ! しっかりしろっ!」

 俺は咄嗟に晶を抱きかかえた。

「おいっ! アキラっ! 大丈夫かっ?!」

 突然の事で、自分が晶の名前を呼んだ事すら、その時は気付かなかった。

 揺すっても起きねぇ、完全に意識ねぇ。顔色もかなり悪い。

 そう思うと、居てもたってもいられず、俺は晶を抱き上げると「保健室行きます!」そう叫んで体育館を後にしていた。

 入学式だって事も忘れて、周りの目も何もかも忘れて、ただ、お前を助けたかった。



 その一心だった。