「あれ? 今日は何も反抗してこない?」

「うるせぇ」

「寂しいなぁ、パパ」

「な~にがパパだ、今まで一度もそんな風に呼んだことねぇだろ」

「そうだっけ?」

 あぁ、こんな親父に付き合ってらんね……。

「早く仕事行けよ、親父、週末休みなしだっていってたろ」

「ああ、そうそう、今夜こそは帰れないから、ちゃんと戸締りしとくんだぞ。昨日、鍵開いてたじゃないか、不用心だな」

「ああ、悪ぃ」

 それどころじゃなかったって言うか……な。

 ちらりと時計を見やると、もう八時ちょい前。

「あ、やべ」

 行かなきゃ、そう思って俺は急いで飯を喉の奥にかき込んだ。

「部活何時から?」

「九時」

「送ろうか?」

「いい、歩く」

「そか」

 親父は、あまり俺の事は干渉しない。あまりしつこくもない。だから、会話のある時はちょっとウザいけど、友達みたいにいい関係を保ってると思う。

 年頃の女が思うような、親父臭い、とか近寄るな、とか洗濯物分けて云々とか、ねぇもんな。

「行ってくる」

「ああ、行って来い」

 少し痛みの残る足首をかばいながら、俺は靴を履いた。


 あ、でも大丈夫かも……あんまり力は入らねぇけど……無理に動きさえしなければ。しかも、悟られないように歩かなきゃな。



 こんな足で試合するっつって、同情されたくねぇし。