「で、どうしたんです?」

 俺は改めて聞いた。

「いや、女子がな」

「女子が?」

 先輩は、そこでまた大きくため息をひとつ。

「江口のパートナーに、すんなり了承してくれなくて」

「え?! マジッすか?!」

 なんで?!

 正直驚いた。まさか、そこまで晶が俺を拒否ってるって事か?

 そう思っていると、横では服部がくくっと笑いをこらえているのが視界に入った。

「てめぇ、笑ってんじゃねぇよ」

「ああ、悪ぃ悪ぃ……でも、笑える……くく、拒否られてやんの、くく」

「あ、いや、違うんだ、加藤が江口と組むのを拒否ってる訳じゃなくて」

「え、どういう事です?」

 その言葉を聞いて、俺は心底安堵した。

 晶が組むのを嫌がってる訳じゃないんだな。だったら、なんで。

 すぐさま服部は舌打ちをして、にやけた顔を今度は膨らませた。

「その、一年の木下って子が……」

「木下? あいつが何を?」

「その子がさ、江口と組むのは私だって言って聞かないらしくて」

「はぁ?!」

 あのやろう! 余計な事言いやがって!

 俺はそんな事を思いながら、服部を見流した。がっちりと目が合う。

「まるで、誰かさんみたいな駄々こねですね」

 そう言って、今度は俺が笑ってやった。

 明らかに服部は膨れ面になり、そっぽを向いた。

「でも、俺、木下とじゃ組みませんよ」

 そう言って、俺はまた先輩を見据える。またため息。

「わかってるって、そりゃまぁ、実力付いてこないだろうし、出るならやっぱチームとしては上狙いたいしな」

「ですよね」

 わかってんじゃん、先輩も。だったら、何を悩む必要がある。そのまま俺たちの意志を伝えればいいだけじゃないか。

「なんか、明日の午前に試合するみたいだよ」

 思いもよらない言葉が、先輩の口から飛び出した。