好きな人はスカウトマン。

それからは、全然話にならなかった。

圭太は「認めない」「俺は別れたくない」しか言わなくて、あたしはひたすら「ごめんなさい」を繰り返していた。


「とりあえず、考えさせてくれ」

そう言って、圭太は後ろも振り向かずに歩いて行った。


もしかしたら会うのはこれきりかもしれない、そう思いながら、あたしは姿が見えなくなるまで彼の背中を見送っていた。


今ならまだ引き返せる。


あたしにとって彼は、生活の一部だったし、いなくなるなんて考えられなかった。


でも、もう戻らない。


そう決心して、彼とは反対の方向へ歩き出した。