「じゃあ夏目先輩は?」
「俺は恋沙汰に興味ない。」
話を降られた夏目先輩はしらっと答える。
確かに夏目先輩が恋愛とかイメージが湧かない。
するとしたら、この間授業で古典習ったような文通を繰り返している程度みたいな。
桜を見てあなたを思い出して詠んでいます…的な。
…あれ、私って酷いこと言ってる?
「ただ、許嫁はいる。」
「はい?」
「許嫁はいる。」
「いや、聞こえなかった訳じゃないです…」
許嫁だと!?
やはり古典に出てくるようなレベルの話だった。
「実際はだいぶ話が風化してるが…。」
実際、許嫁がいたら普通な恋愛が出来なくてつまらないだろうな。
でも夏目先輩はあまりにしらっとしているので、もう覚悟は出来てるのかな、なんて思えてくる。
「ていうか夏目先輩って許嫁出来るほどお金持ちだったんだ。」
「あれ、栗原さん知らなかった?夏目先輩は日本を代表する歌舞伎役者のお家だよ?」
「知ってたけど…日本を代表する…?」
「そう、玲二のお父さんは夏目鈴次郎。」
そういえば、テレビとかで夏目って聞いたことある。
夏目鈴次郎。
歌舞伎役者でありタレント。
夏目先輩…なんであんたこの平凡高校にいるんだ。
「アンビリーバボー…」
今まで知らなかった私を誰か殴ってください。


