「恋バナって…」


私はため息をついた。
色恋沙汰が多い赤丸はたくさんネタがあるだろうが…私はあまりないぞ?
ていうか、皆無。


「面白そうですね。」


意外にも沢村先輩がメガネを上げて同意する。
どうしたんだろう。


「た、楽しそうです!」

「俺は別にいいよ?」

「俺も構わない。」


まだ9時で寝るにはちょっと早い。
暇つぶし、ていうノリなんだろう。
私と金田は少し黙ってわかったと頷いた。


「じゃ質問です!!」


赤丸はテンション高くいう。


「何人に告られたことありますか?」

「ただの嫌みになるじゃねーか!!!!」


おいおい。
ここの奴らは学校でイケメンの園と呼ばれる顔面偏差値70越えのエリート集団だよ!?

これは七海情報で、つい最近まで私全く知らなかったけど!!!
10人とか20人とか、はたまた30人とかいう恐ろしい答えが出ることは分かり切ってる!!


「仕方ないなぁ…じゃあ付き合ったことがあるか?」

「それならまぁ…」

「まずは会長!!」

「ありますよ。」


即答!?
そういう《恋人いました》設定、恋愛小説に置いてタブーじゃないの?
ていうか、これは本当に恋愛小説なの?
コメディじゃないの?


「まぁ、無理やりですけど。」
「どういことですか?」

「積極的な女性があまりにしつこいので、諦めてくれって拒んでいたんです。1か月つき合ったら諦めると言い出して…面倒だったんで付き合って、パシリとして働かせたら、1週間で諦めてくれました。」


最後にニコッと笑った。
どうしよう、今までにないくらいコイツ腹黒い。
せめて夢を持たせて1か月付き合えばいいのに…べたぼれ女が1週間で諦めるってどれほど過酷なパシリなんだろう。
考えただけで冷や汗が…


「…恐ろしいですね。その本性、学校で晒して嫌われればいいのに。」

「栗原先輩が怖いです。」

「むしろ、世の中のマゾヒストが集まっちゃうかもよ。」

「私は世の中が怖い。」


今日この瞬間から、沢村先輩のイメージはドS、腹黒、ストーカーとなった。