帰りの赤丸のねぇちゃんが運転する車の中、私はふと思い出した。
「金田。」
「なんだ。」
「日曜日、空いてる?」
「空いてるけど…」
「うち来いよ。」
「「「え。」」」
綺麗にハモったみんなの声。
「金田はわかるけど、なんでみんな驚くんですか。」
「だって、栗原さんが家に誘ったんだよ!?金田くんを!!」
「声を上げるな大輔。顔が厳ついから怖い。」
「いいなー金田先輩。僕も行きたいです。」
「あ、俺も行きたーい!!」
赤丸が助手席で大きな声を出すと運転席のねぇさんは、「煩い、降ろすよ?」と脅していた。
「私も興味あります。極道の家。」
「怖くないんですか?」
「今のご時世、危険ならありませんよあなたの家。」
だよね。
うちは現に何も悪いことはしてないわけだから。
「宴会なんで着物着用ですよ、我が家。」
「えっ、俺はもってねぇよ?」
「みんなは?」
「ないです。」
「着ないしね。」
「なーい!」
「右に同じですね。」
「………俺はある。」
私はケータイを取り出し、"轟涼子"の名前を探す。
「あ、もしもし、涼子ちゃん?日曜日の宴会なんだけど…うん、金田だけじゃなくてみんな来るってさ。だから5着、男もんの着物頼むよ。…ありがとう涼子ちゃん。」
私はそう涼子ちゃんに頼んで携帯を切った。
「ねぇ俊樹。"涼子"ってさ…」
「わかってるよ、姉ちゃん。…きっと同性同名だよ。あの子引っ越したし。」
「ふーん、そう。」


