曲は今流行りの女性シンガーソングライターのReinaの代表曲。
「うっそ、上手い。」
「ちょ、沢村会長!やばいんじゃ…!」
「…礼二!!」
このままだと、受かっちゃう!!
審査員も驚いている。
沢村会長はたった一言、夏目先輩の名前を呼んだ。
それを合図に夏目先輩は携帯を開いた。
リューちゃんのポケットに入っているはずの携帯を鳴らす気だ。
その時だった。
「あ、金田先輩!」
下のVIP席の方から桐谷の声が響く。
必然的に俺らの視線は下へいく。
キンちゃんがステージに上がった。
すると審査員のおじさんたちがざわめく。
「すみませーん。この子、熱あるっぽいんで連れて帰ります。」
「何をいってるんだ、君!降りなさい!」
「おい、お前何しにきたんだよっ!?私は熱なんて…」
「兄です。」
「「は?」」
俺のこぼれた言葉とリューちゃんの言葉が重なる。
ぽかん、とするリューちゃんに対してキンちゃんは、リューちゃんのおでこに手をつける。
「な、何だよ///!?」
「ほーら、熱いじゃないか"竜希~"」
「なっ!何言って…」
「しっ。」
リューちゃんは騒ぐ。
そんなリューちゃんに気が付かせるために、キンちゃんが人差し指を口に当てる。
おじさんたちはざわめく。
「本当に体調悪いのかね、栗原竜希さん。」
「え…」
リューちゃんがチラッとキンちゃんを見る。
キンちゃんは視線で穴が空くんじゃないかってくらいリューちゃんにテレパシーを送る。
リューちゃんは冷や汗をかきながら答えた。
「あ、あい!フラフラします!」
「"あい"って…。」
「じゃあ、マネージャー室でスタッフに…」
「あ、連れて帰ります。」
「……このオーディション、棄権、早退等は即不合格なのは知っているかい?」
「はい。…こいつなら、いつでも受かりますから。」
「へ?ちょっ…」
「じゃあ帰ろうなー竜希ー。」
「………」
キンちゃんはリューちゃんの腕を引っ張り、強制連行していった。


