「…いや、連れがオーディションだ。」


うん。
間違ったことは言ってない。
栗原が出るんであって、俺じゃない。


「そうなんですか。」

「お前は?」

「ぼ、僕は…」


黙り込んだ桐谷。
やっぱり言いにくいみたいだ。


「お前もオーディションだろ?」

「なんで…知って…」

「生徒会だからな。お前の好きな人だって知ってる。」

「え、えぇ??」


桐谷は真っ赤になる。
ウブな草食系男子ってとこか。
…つーかここはどこだ。
キョロキョロする俺を察したのか桐谷は口を開いた。


「ここはスタジオの控え室です。楽屋みたいなとこです。」

「ふーん。なるほど。」

「合格すれば個室が貰えるんですけどね…」


桐谷は頭をかいて、苦笑いした。


「芸能人なんて…好きな人のためによくやるなー。」

「え?」


きょとんとする桐谷。
あれ?古山季夜が好きなんだよな?
マルちゃんの情報だから間違いはないはず。


「僕は…好きな人のためにアイドルになるんじゃないですよ?」

「え、違うのか?」

「確かに季夜ちゃんはアイドル大好きですが…それ以前に俺は…変わりたいんです。」

「…変わりたい?」


どうやら俺の仮説は外れのようだ。