「で、なんで私がこんな格好してるわけ?月曜日に教えるっていって《ごめーん、やっぱり明日ね》ってどういうこったい!意味わからん。」

「じゃあ、リューちゃんに問題。ここ何処だとおもう??」

「わかるわけないだろ!いきなり車で拉致られたんだから。」


そう。
私はいつものようにバレないように帰ろうと、こそこそしていると、後ろから口を押さえられ目隠しをされ攫われた。
せめての抵抗で、じたばた騒いでいると「騒がないの、チューしちゃうよ?」と私には効果抜群の赤丸の脅し。
それからは一言も喋らず、車に乗せられた。


「そんなに嫌がらなくていいのに。正解は、オーディションのスタジオだよ。」

「……………。」


そりゃあもう私は黙り込んだ。
どうしてこの人達は突拍子ないんだろう。


「なんで睨むかな?俺そんなカッコイい?」

「ぶっ飛ばすぞ。」

「ちょ、冗談だって。」

「赤丸。時間だ。早くしろ。」


夏目先輩が仲裁してくれた。
金田と赤丸と話すと埒があかない。


「オーディションに出るのはリューちゃん、君。」

「な、なんでだよ。お前ら自他ともに認めるイケメンなんだろ?出ればいいじゃん、オーディション。」

「出たら受かっちゃうじゃん。俺たちがやりたいのは、桐谷章太に対する注意。受かると面倒でしょ?」

「注意とオーディションなんの関係があるんだよ。」

「リューちゃんがオーディション受けるから、その関係者として俺たちがこのバッチを貰って、桐谷と接触するため!」

「………はぁ、わかったよ。」

つまりは、
私オーディション出る→
合法的に侵入→
私オーディション開始→
桐谷に注意

私が利用されるわけだ。
なんだか、この人達といると疲れる。
どうしてこう、フリーダムなんだろう。


「頑張れ!リューちゃん!!」

「…因みに金田は?」

「金田は桐谷くんの控え室を探してるよ。」

「あっそう。ま、いなくて良かった。いたらきっと今頃、《ZOO学園のサクラちゃんと同じくらい可愛い!》とか言ってたな、絶対。」


ZOO学園は最近流行りの動物紹介番組。
サクラちゃんとはメスのサルのことだ。
あ、自分で言っといてムカついた。