10分くらいたったであろうか、俺は大分リラックスしていた。
そのとき、スッと障子が開く。


「待たせたな、金田。」


入ってきたのは浴衣の栗原だった。
随分胸元が開いた浴衣。
いやいや、胸という胸はないだろう。
栗原は俺の正面に座り話し出した。


「私の解釈だと、学校で言ってきた不審者を轟…あーさっきの厳つい奴らだと勘違いしたってとこ??」

「あ、あぁ。ていうか…お前は…」

「…栗原組次期党首だよ。」

「………。」


そうボリュームを大きくして言い放つと栗原は苦笑した。
なんだか泣きそうに見えた。
なぜだかはわからない。
いや、なんて反応すればいいんだろう。


「引いただろ?なら、もう私に関わるな。」

「なんで?」


目を合わせずに栗原は呟いた。
俺の言葉に反応しと立ち上がった栗原は形相を変え、俺に怒鳴った。


「なんでって…お前軽蔑しないのか?人殺しかもしれない、詐欺師かもしれない、薬物を販売してるかもしれない、売春してるかもしれない。そんな家の女と知り合いなんだ!怖くないのか!!避けないのか!!差別しないのか!!」

「…そんなことしてるのか?栗原…」


荒ぶる栗原に対し、俺は不思議と冷静だった。


「っ!し、してないよ!!」

「ならいいじゃねぇか。俺は栗原を信じる。」


俺もスッと立ち上がり、栗原の両肩に手を置き、目が丁度同じ高さになるようにする。

俺何してんだろと思ったけど、真っ直ぐ俺を見る栗原の方に驚いた。
これは悪の目じゃない。
栗原の目からはポロポロと涙が。
ああ、泣いちまった。
宥めるように、頭を撫でてやる。
女に泣かれると面倒だと思ったが…何故だか今は平気だ。
その時だった、障子が不意に開いたのは…。