「えっ・・・。」


今まで怪我は何度だってしてきた。

これ以上にひどい怪我をしてずっと道場に行けなかった時期もあった。


だけど先生は俺が顔を出すと

『おー、来たか神童』

とからかうように
俺を迎え入れてくれた。


はずなのに。



「大会前に派手に手を切るとは、

何をしていたんだ君は?」



俺のことを理解して、どんなことがあっても剣を握らせてくれているんだと思った。

周りが俺を痛い目で見るからこそ、先生は俺に大きな声でかまってくれているんだと思ってた。


「なぁ、大輔。

俺、お前が暴力振るう人間だなんて思いたくない。」


だけど、違ったんだな。


「だけど大輔、どうしてお前は先生を裏切るんだ。」


先生は、俺のこと何もわかってなかったんだ。


「俺はずっと、お前がいつか暴力を振るわなくなるのを待ってたのに・・・」


いや、俺が先生のことをわかってなかったんだな。


「なぁ、大輔。

俺はお前のことを信じて剣を握らせていたんだ。」


俺はもう誰にも、信じてもらえないんだ。


いや、最初から信じてもらえてなかったんだな。