オルゴール

「祥太は自分が好きな女ほど幸せに出来ないタイプなんだから」

「嬉しくねぇな、それ」

「あんたの好物は女の罵声と涙」

「違うから」

「ほんとに、姉ちゃん大切にしろよ」

「任せろ」


根拠の無い強気に、無邪気な笑顔。
いかにも姉ちゃんが好きなタイプだな、なんて改めて祥太を見て感じる。


「って、俺みたいな事ってなんですか」

「楓ちゃん裏切って、違う子とキス?バッカじゃない」


口は災いのもと、とはこんな事を言うんだと思う。


「…すみません」

「まぁ、放課後だな」

「そうだった。仲直りしろよ?」

「了解」


こんな日に限って時間が経つのは異様に早い。


「さぁ、放課後だよ。雄紀くん」

「うっせ」

「行っておいで」

「うん」



俺は楓子の家に向かう。
楓子は一人暮らしだから、家には行きやすい。
なのに今日はやっぱり行きたくない。


『もうすぐ着く』


癖でメールを送る。
鍵開けて、っていう合図のメールだ。

ついて、何も思わずにドアノブを回す。

ドアは開いて、それだけで安心する。