自分の部屋に入ってから私は、本を開く。

読みかけで、今日読み終わりたいと思っていた。

隣りの部屋からは弟の雄紀の声と祥太くんのゲームで真剣に戦っているであろう声が聞こえてくる。


「プッ、そんな真剣にやる?」


おら、死ねぇ。
なんて言葉も聞こえてくる。

私は本に集中できなくて、なんとなく二人の会話に耳を傾ける。


「雄紀~」

「なんだよ」

「喉乾いた」

「はぁ?ちょ、姉ちゃんに頼んでくる」

「あ、俺行くよ。その間にお前、それなんとかしろよ」

「分かった」


え、こっち来る!?

私は何故か急いで本を開いて、目で文字を追った。



コンコンッ


「はい?」

「舞さん、入っていい?」

「いいよ。どしたの?」

「あの~、言いにくいんですけど」


ドアをそぉーっと開けながら、祥太くんが入って来る。


「うん?」

「雄紀の部屋に飲む物持って来てもらえますか?」

「いいよ。何が良い?」

「紅茶」

「分かった。待っててね」

「はい!!」


また笑顔。
キュンが止まらない。
私も自然と笑顔になる。