「はぁ」

「誰に向けたため息?」

「みんな」

「バカだね」

「知ってる」


俺は亜也と教室に戻る。
教室に祥太はいなかった。


「あいつは?」

「祥太?知らない」


亜也を教室に残して、俺は祥太を探しに行く。

これは、姉ちゃんの為だ。


『どこにいんだよ』


メールを送る。
返事はなくて、イライラしながら教室に戻った。


「いるし」


教室に入っていきなり目に入った祥太の背中を殴る。


「ふざけんな」

「は?」

「お前、まじでいい加減にしろよ」


自分の席にドカッと座る。
そのまま机に伏せた。

「雄紀」

「何だよ」

「俺、緊張してる」

「は?」

「ちょっと本気でドキドキしてる」


おかしいだろ。
こいつ、顔が良いから軽いタラシ的存在なのに。

そんな祥太がおかしくて、俺が笑うと今度は祥太が俺を殴った。


大丈夫だ。

姉ちゃんはきっとこいつを好きになって、祥太も姉ちゃんを好きになる。

そんな予感と、笑みが溢れて来た。


「明日、楽しみだな」


俺は祥太にそれだけ言った。