「お母さん、お父さん何してるの、早く早く!」

「待ってよ優人。いつも幼稚園には行きたくないってぐずるのに、こういう時には早起きなんだから。ほら、栄人、優人が待ちきれないってよ。急いで支度なさい。」

「ったく、十五にもなって何で今更家族で遊園地に行かなきゃならないかなー。」

そう言いながらも、栄人は泣きそうになる。優人の嬉しそうな顔を見ながら、昨夜両親に告げられたことを思い返していた。

「栄人、優人は後二年もしないうちに何も見えなくなる。あいつ、最近時々ぼやけて見えるって言ってたろ。今日、母さんと病院に行って来たんだが、そこで・・・。」

父親は泣いていた。母親も隣りで肩を震わせて泣いている。

「そこで何て言われたの。ねえ、父さん。ねえ、母さん!」

そう言う栄人も、既に泣いていた。

「脳の深い部分に腫瘍があって、それが目の神経を圧迫しているらしい。腫瘍自体は小さく悪性ではないらしいが、場所が場所だけに、今の医療では摘出は不可能らしい。父さんと母さんで話し合ったんだが、見えなくなるまでの二年間で、優人に沢山の思い出を作ってあげたいんだ。沢山の物を見せてあげたい。栄人も協力してくれるよな。」