夕食を摂りながら、栄人が思い切ったように話出した。

「早和、俺達付き合い始めてもう二年が経つよな。」

「うん、そうだね。」

早和はこの二年間が、今までの人生で一番幸せな時間だったとつくづく思っていた。

「早和?早和聞いてる?」

「あっ、ごめんなさい。つい、この二年間のことを色々思い出していて。」

「うん、この二年間で色んなことがあったね。そして、俺らお互いのことは十分理解できたと思うんだ。違う?」

「そうだね・・・。」

「けど、俺らって家族とか、二人が出会う前のことについては、ずっと知らずにきたよね。まっ、お互い訊きもしなかったんだけど。」

「う、うん・・・。」

早和は、栄人がこのことをいつ言い出すのか、この二年間ずっと怯えていた。いつかは訊かれるし、訊かれなくてもいずれは自ら話さなくてはいけないと思っていた。事実、今まで何度となく言いかけたことはあったのだが、栄人に見つめられると結局何も言えずに話をはぐらかしてしまった。そうやって、自分のことばかり考えていた為、栄人の家族や栄人のこれまでの人生について自分が何も知らずにいたことに、今初めて気が付いた。

(私のような過去があるとは思えないけど、なぜ今まで何も話してくれなかったんだろう?)

「早和、こっち向いて。」

下を向いたまま考え込んでいた早和に、栄人が優しく声を掛けた。

「俺、早和と結婚したい。早和しか考えられないよ。」

「栄人・・・。」

「返事は?」

不安そうな顔で、栄人は早和の答えを待った。

「私も、栄人以外考えられない。でも、あのね・・・。」

栄人は、早和が自分に何か言えずにいることを、ずっと感じていた。過去に何かがあるのだろうと。しかし、早和の過去について聞く前に、栄人自身、早和に話しておかなくてはならないことがあった。

「早和、今度俺の弟に会ってくれないか。俺のたった一人の家族に。」

(たった一人?それって・・・。)