「先生、これからは泣きません。でも、今だけは・・・。」

「分かっています。私も今だけは許して下さい。」

近藤も、涙がこぼれないように、天井を見上げて泣いていた。
それは、友人としての涙だと早和は思った。

優人が点滴を終える頃には、夕陽が傾き始めていた。

「結構時間かかるもんなんだね。早和、待ちくたびれたでしょ?でも、お陰様で俺は大分気分が良くなったよ。」

言葉の通り、優人の顔色は随分とよくなり、表情もすっきりとしていた。

「この調子だと、明日から入院する必要もないみたいなんだけどな。学校も、そう長く休めないし。」

「何言ってるの優人。
近藤先生の言うことはきちんと利かないと駄目よ。
今はいいけど、また具合が悪くなるかもしれないでしょう。」

早和は、ついムキになって話している自分に気付き、「もう、心配させないで・・・。」と、小声で言い足した。

「ごめんね、冗談だよ。さっきから早和が眉間にシワ寄せて真剣な顔しているから、ちょっと言ってみただけ。
俺もあんな苦しい思いするのは嫌だから、きちんと検査してもらうよ。」

優人が、早和の肩を引き寄せた。
二人は病院を出て、栄人の待つマンションに向かっていた。