優人と早和は、お互いの手を重ね強く締めた。
外は、八月の太陽がギラギラと照り付けていた。

病院に着いて外来で診察を待っていると、そこに調度近藤が通りかかった。

「おや、優人じゃないか。久しぶりに来たと思ったら、どうしたんだよ、その傷。」

近藤は優人の顔を見ると嬉しそう話し掛けてきたが、体のあちこちにある打撲や傷跡を見て、顔をしかめた。
栄人と同じ年なら二十六。
しかし、近藤は既に結婚もしており、年よりも老けて見える。
しばらくして、優人の隣りに座っている早和に気付いた。

「あれ?あなたは・・・早和さんじゃないですか?結婚式には行かせてもらいますからね。でも、なぜあなたが優人君と?」

近藤は優人と早和を交互に見て、二人の様子から何かを感じたらしく、「まっ、今は優人君の傷を。」と言って、診察室に入るよう促した。

「とにかくレントゲンを撮るよ。頭はどう?殴られなかったか?痛みとか吐き気とかの症状はない?」

「頭は手で守っていたから大丈夫なんですけど、実は二週間位前から、時々頭痛や吐き気がするようになって。
市販の薬を飲むんですけど、あまり効かないんですよね。
何でしょうか・・・?」

近藤の顔色が変わった。
優人は気付いていないが、その様子に早和は胸騒ぎを覚えた。

「先生?」

返事をしない近藤を不思議に思い、優人が声を掛けた。

「ああ、すまん。そうか。まあ、何も心配はいらないと思うけど、一応頭のMRI検査をしよう。ちょっと時間がかかるけど、いいかな?」

「はい・・・。お願いさます。」

優人も何か感じ取ったようだったが、気を取り直してスックと立上がり、検査室に向かった。
数ヵ所のレントゲン撮影と頭の検査を終えるのに、かなりの時間を要した。
優人が疲れているのは、誰の目にも分かった。

「優人、大丈夫?しばらくお部屋借りて休ませてもらおうか。」

「大丈夫だよ。食べていないから、ちょっと元気が出ないだけだよ。」

早和を気遣って、優人が笑顔で答える。