栄人と優人ーエイトとユウトー

「けど、結局俺はアイツにやられただけで、早和さんを守ってやれなかった。
俺、早和さんだけは守りたいんだ。
俺自身、今迄ずっと兄さんに守られて生きてきた。
そんな俺が誰かを守りたいなんて、自分でもどうかしていると思う。
けど、早和さん、この気持ちは自分でもどうしようもないんだ。
愛してしまったんだよ、あなたを。」

優人は泣いていた。
早和は、今迄悩んでいた優人に対する自分の思いをその涙が全部流してくれたように感じて、素直に自分の気持ちと向き合うことができた。

「私も愛してる、優人君を。」

「えっ?」

優人は、信じられないという顔で聞き返した。

「私も、ずっと前からあなたを愛していたの。
きっと、栄人に初めて紹介されたあの時からだと思う。
けれど、この気持ちは一生隠しておかなければならないと思っていたのに・・・。」

早和も泣いていた。
泣きながら、まだ呆然としている優人を抱き締めた。

「けれど、やっぱり自分に嘘を付いて生きて行くなんて無理だよね。
苦しかった・・・。
これからどんなに辛いことがあっても、例え他の人を気付けることになっても、ずっと優人君と生きて行きたい。」

「早和さん、二人に何が待っていようと、俺が命を掛けて早和さんだけは守るから。
兄さんを傷付けることにはなるけど、いつかは許してくれると信じよう。」

優人が優しく早和の唇を指でなぞり、そっと自分の唇を重ねた。

「アイテテッ、まだちょっとキスも無理みたい。」

痛みを堪えながら、笑った。

「優人君たら。」

「優人でいいよ。俺も早和って呼ぶから。」

早和は、何も答えなかった。

「早和さん・・・?」

不安そうに優人が尋ねる。

「あっ、黙っててごめんなさい。
ただね、幸せだなって思ってたの。
ずっとこの気持ちを自分の胸だけに閉まって生きて行くんだって思ってたから。
私、優人といられるだけで、こんなに幸せな気持ちになれると思ってなかった。
優人は、本当に凄い人だね。」