(そう、早和さんを幸せにできるのは兄貴だけなんだ。)

優人は自分に言い聞かせるように、心の中で何度も繰り返した。

「あっ、やばい!シャンプーが切れてたんだった。優人、俺ちょっとそこのコンビニまで買いに行ってくるよ。早和ー、今日泊まっていくだろ?明日、日曜日なんだし。」

「うん、優人君がいいなら。」

早和は戸惑っていた。今までも二度程マンションに泊まったことがあった。
栄人も優人もそれぞれ自分の部屋で寝て、早和は居間で寝た。
このマンションで栄人が早和を求めてくることはなかったが、早和は常に不安であまりよく眠れない。
優人が眠っているとしても、優人の側で抱かれたくなかった。
けれど、栄人が求めてきたら、きっと抱かれてしまう。
栄人を気付けたくないから・・・。

「俺はいいよ。気にしないで、早和さん。」

「優人もそう言ってるし、決まりだな。それに、後二ヵ月もすればずっとここに住むようになるんだから、予行練習しとかないとね。じゃあ、ちょっとコンビニまで行ってくるよ。」

栄人は、早和に気を使い自分が行くと言う優人をなだめ、二人を残して出掛けた。

(ずっとこれからここに住む・・・か。)

早和は栄人の言葉を思い返していた。

(私は耐えられるだろうか。優人がいる横で、栄人に抱かれることに・・・。

「早和さん、今、ちょっといい?」

優人が、照れたように話し掛けて来た。

「あ、だ、大丈夫よ、何?」

早和の鼓動が早くなる。

「早和さん、俺、ずっと誰にも訊けずにいることがあるんだけど、何だか早和さんには訊けそうな気がするんだ。ちょっと怖いけど、嘘をつかれるのはもっと嫌だから、早和さんなら心のまま正直に答えてくれるような気がする。」

優人の言葉はいつものように優しかったが、表情は真剣だった。