その日はまた、栄人と優人、そして早和の三人で食事をすることになっていた。
初めて優人と会ってから、もうすぐ一ヶ月が経とうとしていた。
早和が店に入ると、優人だけが来ていて席に着いていた。

「優人君、遅れてごめんね。」

「遅れてませんよ。まだ約束の時間より、ちょっと早いでしょ?それより兄貴ですよ、問題は。急な仕事が入って1時間くらい遅れるそうです。」

「うん、私も連絡もらったの。先に何か食べててって言ったけど、どうしようか?私、優人君に合わせるよ。」

「じゃあ、待ってましょう。やっぱり三人で食べたほうが美味しいですよね。じゃあ、何か飲み物だけ頼みましょうか。」

久しぶりに会った為か、早和は自分が緊張して落ち着かないことに気付いた。
優人は、目が見えない。
しかしその瞳は最初の印象通り、とても澄んできれいだった。
早和は優人を見つめている自分に気付き、一人で頬を染めた。

「早和さん、どうかしましたか?ずっと黙ったままで。って、俺もだった。これで会うの二回目だけど、兄貴がいないと何か緊張しちゃいますね。」

(優人君も同じ気持ちだったんだ。それとも私の気持ちに合わせてくれてるの?)

二人は、そんなどことなくギクシャクした雰囲気を変える為、ウエイターを呼んで飲み物を頼んだ。

「優人君、栄人さんってどんなお兄さんだったの?会社ではね、まだ若いのにみんなから信頼されてて、私がこんなに素敵な人と結婚してもいいのかなぁ・・・って悩んでしまうくらいの人なの。あっ、でもね、私だって案外みんなに頼りにされてるのよ。」

「アハハッ、分かりますよ。だって早和さんって、本当に気を使うよね。この前食事した時、僕に気を使って疲れたでしょう。」

早和は、優人の言葉にドキッとした。