栄人と早和、二人の間に秘密がなくなり、早和はやっと会社の人達に二人の関係を話す勇気が出た。
二人はまず、栄人の上司である新庄に仲人の依頼に行った。
実はこの新庄は栄人の父親の友人で、この会社への入社を勧めてくれたのも新庄だった。
親戚とは縁を切った栄人が唯一相談できる相手でもある。
新庄は、栄人が大手の企業から誘われていることを知っていた。
栄人の為にはこんな会社にいてもたかが知れているので、自分のことは気にせず、大きな所に行って力を発揮するように説得しているのだが、栄人は決して移ろうとはしない。
そんな栄人を実の子のように思っていた為、結婚・・・、しかも相手が早和と知り、心から祝福した。

「栄人、いい人を見付けたな。私はお前が優人のことを考えて、もしかしたらずっと結婚しないんじゃないかと思うこともあった。それが、北方君のような女性と結婚するなんて・・・。私も、そして私以上にお前の両親が喜んでいるよ。本当におめでとう。仲人は喜んでさせて頂くよ。」

新庄の言葉に二人は感動し、深々と頭を下げた。
そしてお互いの心の中で、家族の分まで幸せになろうと誓った。

二人が結婚する話が社員全員に伝わるのに、一日もあれば十分だった。女子社員の中には、急に気分不良を訴えて会社を早退する者までいたが、ほとんどが「早和なら許す。」と、笑顔で祝福してくれた。