早和の家は小さな食堂をしていた。儲けという程の利益はなかったが、とても陽気でお人好しの両親だった為、常連の客などもいて、それなりに楽しく暮らしていた。だが、そんな両親だった為、人から頼みごとをされることも多く、友人の借金の保証人になってしまった。その後はよく聞く話で、その友人は借金を返さないまま姿を消してしまい、その保証人である早和の両親の元に、毎日のように取り立て屋が出入りするようになった。そのことは町中に広まり、常連だった客達も恐れて近寄らなくなった。小学生だった姉は学校でいじめられるようになり、保育園に行っていた早和は保育料が払えなくなった為辞めさせられて、ずっと家の中で一人で遊んでいた。家族にとって、毎日が地獄のような生活だった。そんなある日、突然父親がピクニックに行くと言い出した。とても楽しそうにお弁当を用意する両親は、以前の幸せだった頃に戻ったようで、早和は借金がなくなったと思い、嬉しくて嬉しくて大ハシャギした。

「わあーい、ピクニック♪お姉ちゃん、何しているの?早く早く!お父さん、私サンドイッチも食べたいなー。いいでしょ、お母さん?明日からはまた保育園に行けるんだよね。早和ね、ずっとガマンしてたけど、本当はずーっとずーっとみっちゃんと遊びたかったんだあ。」

その日は天気もよく、春らしいぽかぽかした陽気だった。草原でボール遊びをして、追いかけっこをして、お弁当を食べて。みんな、久しぶりに笑った。そして、それが早和にとって家族との最後の思い出となった。帰り支度をして車に乗ると、母親が早和と姉の顔を見つめて優しく言った。