「父さん、母さん!」

栄人と優人が病院に着いた時には、もう二人は息を引き取った後だった。飲酒運転の車がセンターラインを超えて正面から衝突してきた為、二人はほぼ即死だったという。両親の親はどちらも既に他界していたが、仲のいい兄弟がいて、栄人も優人もかわいがられていた。だが両親がいなくなると、その親戚の態度が、急に冷たくなった。

「栄人君は家で引き取ってもいいけど、優人君はちょっとねー。とてもお世話できないし。」

「家も栄人君なら引き取ってもいいよ。将来、仕事を手伝ってもらえそうだからな。お前はどうなんだ?どうせ旦那が死んでから、一人で暮らしているんだろ。優人君だけでも引き取ったらどうだ?」

両親の葬儀後、家に集まった親戚の身勝手な会話は二人の耳にも届いた。

「優人、大丈夫だよ。お兄ちゃんは絶対お前と離れないから。お前と離れるくらいなら、二人で施設に入れてもらおうな。そうしような。」

栄人は悔しくて悔しくて、優人を抱き締めて泣いていた。優人何も言わなかった。ただ呆然として、泣くことさえできずにいた。

「結局俺達は、早くに夫に先立たれた叔母と暮らすことになった。俺らの両親の遺産を一部受け取るという条件で。それでも叔母は喜んで迎えてくれたわけじゃなく、他の親戚に言われて仕方なくね。俺は施設でも構わなかったけど、目が見えない優人がいじめられる気がして、怖かった。それに、優人と二人でいられるならどこだってよかったんだ。優人も二人一緒にいられることが決まった時には、ホッとしたように泣いてたなー。