「お疲れ様っす!」



あたしは目を丸くした。

目の前には彼がいた。


「あ、お疲れ様です。」


一目惚れしたとか聞いたから
変に意識しちゃう。


あたしはこの時まだ全然
男慣れをしていなかった。
そのせいか
明らか冗談のような話なのに
真に受けていた。


更衣室に入って着替え終えて
休憩室に戻ると彼はまだいた。


「斉藤さん!アド教えて下さいっ」

「えっ?」


あたしは一瞬悩んだ。


彼氏がいる。

でも彼氏だって女友達とメールしてる。

自分だけヤキモチ妬いてるのは
悔しい気持ちもあった。





「・・いいよ。」

「やべっ!超嬉しい!」

「じゃぁ、お疲れ様です!」

「俺がバイト終わったらメール送るねっ♪」





・・教えちゃった。


『バイト終わったよー♪』
って彼氏にメールしながら
初めての出来事で少し罪悪感がでてきた。








でもこの出来事がなかったら
現在(いま)のあたしはいない。





その夜から落合君とメールの
やり取りが始まった。








同時にあたしは幸せと不幸の
扉を開いてしまった。