マイペースで、話が通じなくて無神経で。
とにかくあたしの中でなし。
―――だけど
一々気になるヤツ。
「チャンスじゃない?あたしのこと知りたがってるんでしょ?そっちは」
あたしは挑発するように笑いかけると、響輔は無表情のまま顔をこちらに向けてちょっとだけ目を細めた。
「な、何よ」
思わず身を引くと、ずいと、それを追いかけるようの響輔が顔を寄せてくる。
すぐ間近に接近した響輔の肌は、男のくせにきめこまやかでさらりと触り心地が良さそうだった。
黒い瞳でじっと見つめられ、あたしは思わず声を上げた。
「ちょ、ちょっと!何なのよ!」
「いや。こうやって見ると幽霊っぽく見えへんなって」
「幽霊??」
素っ頓狂な声で答えて、それでもすぐに合点がいった。
ああ、こないだ朔羅を脅かしたときに……
本当は青龍会本部で鴇田を待ち伏せていた。“死体ごっこ”でちょっと驚かせてやろうかと待ち構えていたのに、現れたのは予想に反して龍崎会長と―――朔羅だった。
あの子は面白いほど怖がってくれて、何事にも動じない鴇田を脅すよりも愉快だった。
「こないだ会うたときは夜やったし、あんたの顔はっきり見えんかったけど、普通っぽいな」
普通――――…
「何よそれ!あたしはモデルで女優なのよ!!」
毎日時間をかけてお手入れしてる体と顔。
きれいに着飾って街を歩けば、男たちがそわそわしながら振り返るこのあたしが―――
普通ですってーーー!!?



