変な女ですって!!
あんたにだけは言われたくないわよ!
それでもこれ以上喚くと、今度こそ車掌に何か言われるかもしれない。あたしは黙ることにした。
足元に置いた響輔のボストンバッグにふと目がいって、体長10cm程の茶色いテディベアがくっついていることに気付く。
「それ…可愛いクマのぬいぐるみ。可愛いけど…あんたの趣味?キモ」
「まさか。妹が何や有名なテーマパークに行ったときに土産でこうてきたもんや。勝手につけられてん。
外すのも面倒やったからこのままにしてるけど、あんたこうゆうの好きなん?
意外と乙女趣味なんやな。顔に似合わず」
「な、何ですって!」
「そっちこそ、キモいとはなんや」
バチバチっ
あたしと響輔の視線がぶつかり空中で火花が散った気がした。
ダメだ。あたしやっぱこいつ苦手。ってか嫌い。
素直に席変わってもらえば良かった。
この様子からすると、響輔はこないだのことを根に持ってなさそうだ。
まぁ根に持つタイプには見えないけど。いい意味でさっぱり、悪い意味で無関心って感じかしらね。
だけどよっぽどそれを攻められた方が楽だった。
もっともらしい言い訳を並べて、この話題から逃げ切る自信はあったし。
はぁ
小さくため息を付き、流れる景色を車窓から眺めた。
響輔も無言で腕を組んでる。
東京までの約二時間半―――この険悪な雰囲気に耐えなきゃと考えると、大人しくマネージャーと帰ったほうがまだましだった。なんて早速後悔してるあたし。
無言の時間は眠気を誘う。
疲労がたまった体に新幹線の揺れは心地いい。疲れていたのもあっていつの間にかうとうとと首を揺らしていた。
東京帰って、スタジオに向かってそのあとホテルに戻って、その後……
なんて頭の中で思い描いていたけど、その考えさえ億劫になって視界が暗く落ちていく。
ガクリ
と首が揺れて、はっとなった。
何かにぶつかって慌てて目を開けると、響輔の顔がすぐ近くにあった。



