響輔は目をきょとんとさせ、


「なんや。寂しいんか?」


と聞いてきて、今度はあたしがきょとんとなる番だった。


「はぁ!?」


顔を歪めて響輔を睨んで、


「誰が!自惚れるのもいい加減にして!」あたしはそう怒鳴っていた。


「別に自惚れてへんけど、話し相手がおらんくて寂しいんかと思うたから。


でもちゃうんやったら、用あらへんし」


響輔は相変わらずの無表情で頷いて、再び腰を上げる。


「ちょ、ちょっと!待ちなさいよ!」


ぐいっとまたもあたしは響輔の腕を引っ張り、響輔は座席に逆戻り。


「なんやの。あんた何がしたいん?」


響輔が迷惑そうに眉をしかめて、今度はあたしが戸惑った。





ホント―――あたし何がしたいんだろう……




あたしはキョロキョロと辺りを見渡した。


学生が夏休みに入っているこの時期、席のほとんどが旅行やら実家へ帰省するのだろうか乗客で埋まっていた。


「せ、席なさそうだから、ここに居てもいいわよ?」


ぷいと顔を背けると、響輔は何か言いたげに目を細めて、


「別に俺一人だったらどうとでもなるし、かめへんけど」


と答えて場内を眺めた。


「居てもいいって言ってんの!人の厚意は素直に受け取っておきなさいよ!」


またも怒鳴ると、響輔どころか今度は周りの乗客たちも迷惑そうに顔をしかめてこちらを睨んできたので、あたしは慌てて口を噤み、今度こそ俯いた。





「変な女……」





響輔は迷惑そうにそうぽつりと呟いて、でも席を立とうとはせずにボストンバッグを足元に置いた。