鴇田の見張りには今のところ気付かれてないみたいだけど、今響輔と一緒に居るところを目撃されたらまたあいつに何か言われるに違いない。


あいつが怖いわけじゃないけど、今計画を邪魔されるわけにはいかないのだ。


それに響輔がこないだの件について何か言ってきたら、また揉めそうだ。


(あまり気にしてないように思えるけど)


それでもここで騒ぎを起こすわけにはいかない。


強引にマネージャーの手を取ったときだった。


TRRR…


マネージャーのケータイが鳴り、


「ちょっと待って」彼女は一言言いおいてケータイに出た。


待ってられない。


あたしはマネージャーを置いて違う列に並ぼうとしたけれど、その行く手を響輔が阻んだ。


パシッ


唐突に腕を掴まれ、その手の力は思いのほか力強かった。


驚いて目をまばたくと、


「厄介な連中引き連れおって」


響輔はぼそりと呟いた。


―――厄介な連中……ってのは、聞かなくても分かる。


鴇田の舎弟たちだ。あたしからは見えないけど、きっと響輔は気配を察したのだろう。


『間もなく東京行きのぞみ226号が23番線に到着します。黄色い線の内側までお下がりください』


アナウンスが流れ、流れるように新幹線が到着したのはそれから数秒後のこと。


響輔は違和感のない仕草で腕を引くと、開いた扉に足を向ける。


「え…ちょっと!」


響輔の行動に驚いて声を上げると同時だった。


自由席に座ろうと、人が流れるように押し寄せてくる。


電話途中だったマネージャーが気付いたけど、あたしに手を差し伸べてくるより早く、人の波がそれを阻んでマネージャーと離れてしまった。