俺の提案に、響輔はちょっと驚いたように目を見張った。
「虎間と、鷹雄じゃ全然違いますよ」
「なら諦めるんか?おめぇの気持ちはそれ程までなのか?」
俺の問いかけに、響輔が息を呑んだ。
「かかってこいよ。俺はいつだって迎え撃つ。虎間とか鷹雄とか、上とか下とか関係ねぇ。
これは男同士の戦いや」
俺の言葉に響輔は開いていた目をゆっくりと閉じた。
何だよ…やっぱ俺の言葉は届かなかったか。
やっぱりこいつは鷹雄で、虎間を裏切ることはできねぇってことか……
俺たちの築き上げてきた関係って、薄っぺらいものだったんだな。
がっかりだぜ―――
俺はちょっとため息を吐くと、今度こそ浴槽からあがろうとした。
もともと暑がりだから、滅多なことがない限り長湯はしない。
のぼせそうだ。
浴槽の縁に脚をかけると、またも響輔の手がそれを阻んだ。
「あ?まだ何かあるンかよ」
若干うんざりした気持ちで振り返ると、
響輔はその整った顔にうっすらと笑みを湛えていた。
ぞっとするぐらい薄ら寒い気迫を感じる。
「ほんまに。ほんまにええんですね。朔羅さんを好きで。
あとで後悔したって知りませんよ」



