TRRR…


ぼんやりと物思いに耽っていると、突然ケータイが鳴った。


『“龍崎会長”さまからお電話です』


機械音が伝え、俺は一瞬驚きに目を開いたものの、すぐに


「繋げ」またも短く返した。





短く音が鳴り、ハンズフリーのコールに変わる。


『鴇田、こっちに向かっている最中か?』


いつもより少しだけ早口で低い声だった。


「はい。いかがされました?」


『トラブルだ。浅田組と中尾組のシマの境界線を大至急調べろ』


浅田組と、中尾組―――…


『所在地は東京都…』


俺は会長の言葉をしっかりと頭に入れ、片手でハンドルを操作しながら、片手で開いたパソコンに指を走らせる。


会長の短い説明では、浅田組と中尾組がシマの境界線を巡って抗争を起こしているとのことだった。


その喧嘩にどうやらお嬢が巻き込まれたみたいだ。


「ちっ。厄介だな」


一瞬だけモニターに目を移し、再び前を見たとき、目にも鮮やかな赤い車体が目の前にあった。


あの、むやみやたらと車線変更していたスポーツカーに違いなかった。




――――!!!