あたしの言葉に、叔父貴はまたも沈黙するかと思いきや、
「勘違いしているようだが、俺も鴇田も普通通りだぞ?確かに今日は顔を合わせてないが、さっき電話をした」
とあっさりと言った。
「え………?」
「ついでに言うと、あいつは一週間前のことを謝ってこなかったし、こっちも謝罪の言葉を強要してねぇ。
別に欲しいとは思わねぇしな。
あいつの“申し訳ございません”は一回聞けば十分だ。それだけあいつの言葉には重みがある」
重み………?
「あいつは昔っからああだよ。俺の小せぇ頃は、今より拍車を掛けて鬱陶しいヤツでな。
やれ宿題をしろ、だの。早く寝ろ、だのおふくろより煩い。
おまけに高校時代喧嘩に明け暮れて退学処分になりそうだったときに、あいつ本気で俺を殴りやがった。
鼻の骨が折れて鼻血が止まらなかったからなぁ。あんときはマジで恨んだぜ。
まぁあいつも昔よりだいぶ丸くなったけど、あんときは親父より鴇田の方が恐かった」
え゛……二人にそんな過去が…
って言うか叔父貴の若い頃の話ってあんま聞かなかったけど、叔父貴って戒よりヤンチャ!?
って言うかあれで丸くなった!?じゃぁ昔はどんだけ尖ってたんだよ、鴇田!
って言うか!鴇田ぁ!!
叔父貴の美しくて高い鼻を折るたぁどーゆう神経!!
と、一人でキィっと怒ってる横で、叔父貴は昔を懐かしむように目を細め、頬に手を当てながら吐息を吐いた。
「でもさ……あいつのお陰で目が覚めたって言うか…。
あいつ…いつも俺に小うるさいヤツだけど、その行動や言動は常に重みがあった。
あいつ―――不器用なヤツなんだよな」