俺がそんなことを考えてるとも知らずに、響輔は無表情に俺を見てきた。


「お嬢にキャンサーセンターのことを言うのは、白虎のためですか?盃の話が固まるまで、彼女には下手な動きをとられたくないと?」


「それ以外何があるんだよ」


「―――いいえ」


響輔は顔の筋肉一つ動かさずに、再び前を向いた。


響輔は―――きっと、俺の本当の気持ちに気づいている。


下手な動きをとられたくない。ってのはまぁちょっとはあるけど、





でもそれ以上に、あいつを、朔羅を傷つけたくない。





響輔は気付いているのに……だけど敢えて問いただそうとはしない。


こいつのこうゆうところ―――俺は……



嫌い。



「で、素直に話すんですか?」


「話すわけないだろ?あいつにはもっともらしい嘘でごまかす」


「信じますかね」


「演技次第だ。お前にも手伝ってもらうぜ?ヘタうつなよ」


響輔は自信なさそうにちょっと鼻の頭を掻いた。


「まぁやれるだけはやってみますが」


「あいつは素直だからな。いつも通り喋ればあっさり信じるさ」


「そこが可愛いところでもありますよね」


響輔の言葉に、俺はこいつの横顔を再び見た。


こいつの口元に淡い笑みが浮かんでいる。




響輔―――やっぱお前―――……