「それはまた……どうして?」


響輔は訝しそうに眉を寄せた。


「あいつにこれ以上隠し通せない。俺が隠しているとあいつは組の誰かや、ダチに聞く筈だ」


「まぁ、そうですね。あの性格からしたら」


響輔はふぅとため息を吐いた。


「でもこの大変なときに言うべきですかね?」


「大変なときだからこそ言うんじゃねぇか。これ以上あいつに嗅ぎ回れたら厄介だからな」


ぞんざいに言って、俺は浴槽の縁に両脚を投げ出した。


「厄介―――ねぇ……」響輔は頷くと、遠くの方に視線をやる。


その横顔に何か意味深なものが感じ取れる。


なんか…昔からこいつのこと知ってるけど―――最近妙に大人びて…っていうか色っぽくなった?


普通の女ならこんな男から言い寄られたら一発で堕ちるな。


もし…




もしもの話だ。朔羅の花婿候補が俺と響輔だったら―――



あいつはどっちを選ぶだろう。







なんて考えながらも、


「何だよ」


俺は面白くなさそうに唇を尖らせた。