「こうやって……




ほら、あいつはいつも私の手の中だ」




鴇田の手のひらを見つめると、その手の中に遠くに居る戒がすっぽりと収まっている。


その手のひらを合わせると、戒の姿が見えなくなった。


ドキリ……


として、あたしは心臓の辺りを押さえ鴇田を凝視すると、


「お…お前が戒を殺したら、それこそ白虎が黙っちゃいない。修復不可能なほど決裂して全面戦争だ」


あたしはいつになく真剣なまなざしで鴇田を睨み上げた。


言いようの無い不安が胸を押しつぶそうと圧力をかけてのしかかってくる。


それぐらい鴇田の目も真剣だったし、そもそもこいつが冗談を言うヤツじゃない。


だけど


鴇田は喉の奥でくっと笑うと、


「冗談です」と言って、口元に手をやった。




「冗談でも本気でも、あたしがあいつに手を出させない。あいつを守ってみせる」




あたしが返すと、鴇田はふっと目尻を和らげて、再び戒を見つめた。







「虎間のことが好きなんですね」






その声は驚くほど優しい声音をしていた。