。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅱ・*・。。*・。



乱暴に襟元を正す鴇田に、


「申し訳ございません!うちの従業員がご無礼なことを!!」


と頭を下げ、おネエ店長が深々と謝った。


「いや。大丈夫だ。それに先に手を出したのは私の方だ」


その冷静な返答に店長がほっとしたのか、


「こちらのお代は結構です。ご迷惑をお掛けして申し訳ございません!従業員はしっかり躾けておきますので!!」


とふてくされたようにそっぽを向いている戒の頭を掴んで、強引に下げさした。


鴇田が苦笑し、再びテーブルにつくと急に疲れがきた。


気を取り直してアイスティーに口を付ける。


「ここがバイト先だったからいいものを、他だったらお前指一本じゃ済まなかったぜ?感謝しな。


それに仮にも青龍の次期会長だぜ?あいつが跡を継いだら、立場が逆転する。


あいつの下にお前がつくことになるんだぜ。下手なことはしない方がいいんじゃない?」


そっけなく言うと、鴇田は


「ご忠告どうも」とあっさりと受け流し、お冷のグラスに口を付ける。


少しの間黙って水を飲んでいたが、考え直したように




「私はまだあいつを後継者だとは認めていませんよ。その気になれば私があいつを殺すことだって出来る」




気味悪い微笑を浮かべて鴇田が顔を上げ、あたしの背中にぞくりと悪寒が走った。


こいつが強いことは数日前の騒ぎで知った。


こいつはまだ―――100%の力を出し切っていない。


鴇田はちらりとカウンターの方を見ると、ふてくされたようにトレー拭きをしている戒を流し目で見た。


嫌な視線にあたしが鴇田の顔を凝視していると、鴇田は両手のひらを合わせて水を掬うような仕草をした。