そんなやりとりをしていると、戒がドリンクを運んできてくれた。
「アイスティー♪と、
ホットコーヒーでございます」
戒はあたしの前にアイスティーのグラスを丁寧に置いてくれて、鴇田の前にガシャン!と乱暴にコーヒーのカップを置いた。
カップから中身がこぼれて、鴇田の膝の上に飛び跳ねたみたい。
「熱っ!てめぇもっと丁寧に置け!」
鴇田が立ち上がり戒の胸倉を乱暴に掴むと、戒も負けじと鴇田の胸倉を掴む。
「お前が朔羅や響輔にしたことに比べりゃ大したことねぇだろ?」
とこっちも戦闘態勢。
大勢の客の前だってのに、素を隠そうともしねぇ。
戒のピリピリとした殺気が、刺すように伝わってくる。
それぐらい戒が怒っていることは確かだった。
だけど場が悪すぎる。
再び周りがざわついて、あたしたちに注目し始めた。
「ちょ、ちょっと戒!とりあえず落ち着こうよ。な」
慌てて、睨み合ってる戒と鴇田を引き剥がそうとして戒の手を止める。
鴇田が挑発するように薄く笑い、乱暴に戒の胸倉から手を離した。
「まだガキだな。“客”に向かってすぐ拳を向けるなよ」
「あんたが客?ふざけんじゃねぇよ」
吐き捨てるように言って、戒はその細腕一本で鴇田の襟元をぐいと掴み上げる。
周りがざわついて、ひそひそと喋り出す。
あたしが周りを見渡すと、みんなあからさまに視線を逸らした。
「戒…どうしたんだよ、お前らしくない」
あたしが困ったように戒を見上げたときだった。
騒ぎを聞きつけて、血相を変えておネエ店長が走ってきた。
「龍崎くん!!お客さまに何てこと!離しなさい!!」
おネエ店長に両肩を掴まれて、ちっ、と戒が舌打ちし、そこでようやく鴇田の襟元から手を離した戒。



