そんなやり取りをして何とか着替えると、鴇田が窓際のテーブルで長い脚を組みぼんやりと外を眺めていた。
く…敵ながらキマってやがる!
と、若干怯みつつも、
「待たせたな」あたしは鴇田の向かい側に腰を降ろした。
すぐに戒がオーダーを取りに来て、
「ご注文はお決まりですか?♪」
なんて声だけ聞いてりゃ、そりゃ天使みてぇな声なのに、その顔はまるで般若のように怒っていた。
こわっ!!
鴇田はホットコーヒーを、あたしはアイスティーを頼んで、戒が睨みを効かせながらもしぶしぶ引っ込んでいった。
「てかお前謹慎中じゃなかったのかよ」
と鴇田を睨むと、
「まだ謹慎中ですが、別にお茶をしに出かけるぐらいはいいでしょう?」
と鴇田の淡々とした答えが返ってくる。
「叔父貴にちくってやる」
と言うと、こいつはまたも怯まずにちょっと淡い笑みさえ浮かべていた。
う゛……あたしが叔父貴を避けている状況…こいつは分かってる…
だめだ。こいつに何をいってもダメージを与えることができない。
あたしは諦めて吐息をついた。
鴇田の左手がちらりと視界に入り、薬指には包帯が巻いてあった。
「手……まだ治らないのかよ」
腕を組んでぞんざいに聞くと、鴇田ははじめて苦笑を漏らした。
「ええ。あと一週間はこのままですね。ご心配ありがとうございます」
「別に……心配したわけじゃない」
「そうですか。それでもありがとうございます。
そして、この間は大変ご無礼なことをして申し訳ございませんでした」



