ちょっと待て…この場合の、“あの人”ってことは鴇田…のことだよなぁ、きっと。
「何で!?どこをどー見てあいつのこと気に入ったんですか!」
「どこって?もう全てよ!!顔から体形から声の質の迫力まで。あたしの好みなの!!」
それって店長は鴇田にラブってこと!!?
いや…いやいやいや…
「あいつにはもう決まった人(叔父貴のこと)が居るんです。残念ですが……」
なんて嘘を並べると、
「決まった人?やっぱりどこかの店の黒服かしら~。
ほら、うちって女性客多いじゃない?たまにああゆう変な客が来て困るのよねぇ。
うちとしてもトラブルも困るじゃない?」
黒服…?
ああ、店長は鴇田を変な目で見てるわけじゃなくて、ただ単に用心棒として雇いたかったワケね。
だけど黒服って…どこをどー見たらそーなるんだよ。
「あいつああ見えて黒服じゃなくて税理士?ですよ」
「税理士??あら~そう。まぁ見えなくもないわね」なんて言って、でも店長は残念そう。
とりあえず、あたしの首は繋がったわけ??
「ところで税理士の彼とはどーゆう関係?親しそうだったけど」
親しそう言うな!あいつとは無関係だ!!
と怒鳴りたいのをこらえ、
「叔父貴の秘書なんです」と笑ってごまかした。
とりあえずクビにならないため今は必死だ。
「あの…ところであたし……クビ…ですか??」
「クビ?いやぁね。あんなことぐらいでクビにするわけないじゃない。あんたは良く働くし気が利くからね」
良かった~…
とほぉっと息をついて思わず肩を落とすと、
「それより」とまたも店長が真剣な顔であたしの肩をがっと握ってきた。
「彼、名前何て言うの?」
やっぱ気があるんじゃん……
「ヤクマルですぅ」なんて言ってごまかして、あたしは笑顔を浮かべた。
「薬丸さんね♪覚えたわ」
ヤク○。間違ってねぇだろ?



