「だけど川上~、まさかそれを伝えに来ただけ?」


もはや興味を失ったのか、戒がアイスコーヒーを音を立てて飲み、遠くの方を見ていた。


「ち、違うの!じ、実は…その…一緒に来て欲しいって言うか…」


またももじもじするリコを見て、あたしと戒は顔を見合わせた。


「それってダブルデートってこと??」


「だ、だって、キョウスケさんと二人きりなんて…まだ緊張するし……それに何を話していいか分かんないし…」


「緊張するってキョウスケに?」


あたしは目をまばたいた。


「あいつは何話しても大抵ちゃんと聞いてるし、聞いたら答えてくれるぜ?気負うことないって」


と気のない返事で戒は花火大会のチラシを手に取り眺めている。


「ま~…そうだよなぁ。あたしもあいつに緊張を覚えたことなんて一度もないや。むしろあたしが振り回してるけど、あいつ文句も言わずにちゃんとついてきてくれるし」


「そうそう、俺もいっつも自分のことしか喋らん」


「もぉ。どんだけ自由人なのよ!二人とも」


リコがちょっと頬を膨らませる。


でも…まぁダブルデートとは言え、あたしあんまりちゃんと戒とデートしたことってないから、ちょっと行ってみたかったり…


でもキョウスケも一緒となるとな~…


でも戒とデートしたい!


ちらりと戒を見ると、戒はふてぶてしく口の端を吊り上げて、


「花火大会っちゃあれだな?浴衣だよな??お前浴衣着てこいよ」


なんてあたしをエロい目で見る。


前言撤回!



野獣戒!!


こんなエロ戒の前で浴衣になんかなったら、三秒で脱がされるに決まってる!