ワイシャツとジーンズと言うラフな格好に着替えて、イチの作ったという料理が並べられたテーブルに、イチと向かい合って座る。
初めての光景に、違和感を感じつつ俺の箸を持つ手が一瞬躊躇した。
テーブルにはブリ大根をはじめとする煮物類が数点、それから炊き込みご飯や味噌汁、焼き魚なんかが乗せてあった。
料理はあまりしないが、たまに凝ったものを作りたくなる。
食材は冷凍庫に放り込んであるから、それを解凍したのだろう。
ブリ大根を一口、口に含んで俺は目を細めた。
―――懐かしい……味がする―――
そんな風に思った。
「お前、意外に料理がうまいんだな」
なんて言うと、イチは心外そうに眉を吊り上げ、
「意外に、だけは余分だよ。こう見えてもママのお店の手伝いを小さい頃からしてたからね」
とそっけなく言う。
それ以降会話は途切れ、無言のまま食事を摂った。
沈黙は慣れている。と言うよりも、どちらかと言うとあれこれ喋らない方が楽だ。
黙々と食事を摂り終えると、イチはまたもどこからかウィスキーの瓶を引っ張り出してきて、ソファに腰掛けた。
「お前、そんなもの呑むのか?」
まだ未成年だろ、なんて言うと、
「つまんないこと気にするのね。きょう日の19歳の女は酒ぐらい飲むよ」とイチはあっさり。
「呑まなきゃやってられないわよ。
あんただって若い頃から飲んでたでしょ?今だってそれなりに若そうには見えるケド」
なんて言ってイチは二組用意したうち一つのグラスを俺の前に置いた。



