27年間―――俺は何をやってきたのだろうか…


いや―――悪いのは俺だ。


27年間の信頼を、あの一瞬で裏切った。


お嬢の首に腕を回した瞬間に―――


それほどまでに会長はお嬢のことを―――……





百合香の娘を―――





あの軽蔑したような冷たい眼差し……


言いようのない消失感に、俺はバスルームの鏡に拳を打ちつけた。


ガシャンッ!


派手な音がして鏡が割れ、俺の手から赤い血が流れる。


流れ落ちる血は、シャワーのせいでとめどなく後から後から溢れてくる。


それは俺の悲しみの色なのだろうか―――


割れた鏡の破片に、俺の歪んだ表情が映り―――俺は項垂れた。



―――



それから何分経ったろう。


血は止まるどころか次から次へと流れる。


俺は諦めてバスルームを出た。


ドンドンッ!


脱衣所の向こう側の扉を激しく叩いている音がする。


「ちょっと!何があったのよ!!凄い音がしたんだけどっ!」


イチの叫び声が聞こえて、俺はバスタオルを腰に巻くと脱衣所の鍵を開けた。