それでもキョウスケは僅かに首を振った。


「響輔っ!いいから答えろ!」


戒が怒鳴ると、ちょっとだけ鴇田の手が緩まった。


「……ほんまに…知らへん……」


キョウスケが苦しげに呻く。


「お前も強情だな。早く吐かないと、ここに居る誰かの首が折れるぞ?


ねぇお嬢?」


まるで愉しむように耳元でそっと囁かれて、あたしの首の裏にぞっと鳥肌が浮かんだ。


あたしが油断してた。


この細腕からは想像が出来ないほど、こいつは遥かに強くて、場慣れしている。


キョウスケやリコを人質に捕られてなきゃ、こんなヤツ倒してみせる自信はあるのに。


それでもこうして首を絞められてるのは、完全なあたしの落ち度だ。


鴇田に首を絞められながらも、あたしは少ない脳みそで考えた。


何故鴇田はイチのピアスなんて欲しがるのか。


だってキョウスケが持っていたのはピアスじゃなく、数珠の破片だ。


それもあたしが引きちぎったヤツ。


あれはキョウスケが鴇田に渡してもうないし、第一何でキョウスケがイチのピアスなんて持ってる?


「響輔!!」戒が珍しく余裕のない顔で怒鳴り声を上げても、キョウスケはただ首を振るだけ。


鴇田の腕があたしの首を一層強く絞めあげて、あたしは思わず目を開いた。


そのときだった。






「何をしている?」






聞きなれた重低音に、あたしは目を開いて声のした方を見た。