戒と変態タイガは居間ではなく、戒の部屋に居た。


あたしが戒の部屋を覗くと、変態タイガが戒の後ろから抱きついているところだった。


戒は激しく抵抗して顔を青くしながら、あたしの登場に顔を輝かせる。


「何やってんだよ!」


べりっと戒からタイガを引き剥がすと、戒はあたしの背後に隠れるようにさっと移動してくる。


「戒。ちょっと厄介なことになった」


タイガに聞こえないように耳打ちすると、あたしの真剣な顔に戒は一瞬目を細めたもののすぐに表情を引き締めた。


部屋を出るとナースリコが心配そうに立っているだけで、ドクターの姿はない。


どうやら居間でユズのもてなしを受けているようだ。


「蛇田がキョウスケに会いに来た」あたしは短く説明すると、戒は眉間に皺を寄せて、


「鴇田が?何で……」と思案するように顎に手を当てている。


「分かんない。でも何か嫌な予感がする」


ざわざわと胸の中をくすぶる不穏な予感にあたしはぎゅっと心臓の辺りを握った。


「様子を見てくる。お前は川上といろ」


口早に言って、戒が顔を上げたときだった。


ガタガタッ…


頭上で激しい物音がした。ちょうどキョウスケの部屋の辺りだ。


「響輔っ!」


戒が目を開いて、走り出した。


「戒!!待てよ!」


あたしもその後に続く。


「えっ!朔羅!?」とリコも後を追ってきた。