キョウスケはあたしの言葉に反論せずに、大人しく雑炊を食いはじめた。


三分の一ほど食って、「すんません。もうちょっと限界……」と言って腹を押さえている。


「食欲ねぇよな。でもこれぐらい食えばもう薬飲めるだろ」


あたしは薬の瓶から錠剤を取り出して、ついでにキョウスケのマグカップに入れた水を手渡した。


去年の“蠍座パーティー”であたしたち全員でキョウスケにあげたひよこの絵柄が入ったマグカップ。
※KYOSUKE参照


それをキョウスケは今でも大切に使ってくれている。


クリスマスにプレゼント交換したトナカイのぬいぐるみは、ある日、日干しされてるのをいいことにあたしが自分の部屋に誘拐した。


以来トナカイはあたしの部屋にいるけれど、それでもキョウスケが大切に飾っていてくれたことを思うと―――ちょっと心が痛んだ。


こうやって考えると―――あたしのことを大切に思ってくれていた形跡があらゆるところに残っている。




―――薬を飲み終えると、小さく吐息をつきキョウスケはまた布団に潜り込んだ。


「熱……一度きちんと計った方がいいかもな」そういいながらキョウスケの額に手を伸ばすと、キョウスケはやんわりとあたしの手を払った。


「……あんまり…近寄らんといてください」


キョウスケの言葉に思った以上にズキンと胸が痛んだ。


「あ!そ、そーだよな!あたしって無神経!ははっ…ごめんな…」


慌てて謝ると、響輔はうっすらと瞼を開いて、




「そーじゃなくて、……風邪移るし。



それにあんまりかっこ悪うとこ見せたくないんです」




と、熱のせいだけじゃないだろう。頬をちょっと赤く染めて布団を引き上げた。